2023年03月27日

新しい和食の形

/目黒川の桜/和食しんくろにて新しい和食の形/

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 あちこちで一斉に開花した桜。
 どれだけ大騒ぎしても、咲いているのは長くて1週間。
 短い期間だからこそ花が咲くと嬉しいし、花を愛でてしまう。
 お祭り好き気質こそ日本人、ってことだろうか。

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 夜は、和食しんくろへ。
 今月3/1にオープンした、完全予約制のコース料理のみの和食屋。
 懐石料理とはこう、割烹料理はどう、と窮屈な型に拘らない料理が楽しめそうです。
 逆に言えば、「本来なら御法度なんだけどなー、もう気にしなくていい時代なんだなー」を感じられる店。
 何年かして、ああその料理はしんくろが始めたんだよ、となるやも知れない。

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 店舗は2階、出入りは階段のみの様で、ここからして「こういう和食屋もアリなんだ」と感じ入ります。
 店名の「しんくろ」は、店主の永川慎さん、相方の黒河さんから。
 くろかわって聞いて「黒川」しか思い浮かばなかったけど私、「カワはサンズイの『河』なんです」とのこと。
 カウンター10席に半個室が用意され、もちろん予約はカウンター席。

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 定刻での一斉スタートではありませんが、仕事帰りに立ち寄れば、この夜の四組は一斉スタート。
 コースは12,000円のみ、飲み物代は別、アラカルトもアリですが、好みを伝えてのお任せでお願いしました。
 それではビールで乾杯、いくら型に拘らなくても、グラスをぶつけてはいけません。
 今夜は五反田で二人お疲れ様会、ヱビスの中瓶がすっと溶け込む落ち着いた雰囲気。

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 【前菜】生湯葉の刺身、北海道根室産雲丹、菜の花お浸し、鼈甲餡(べっこうあん)。
 やもすれば花冷え、それを包み込むような冷たすぎず、さりとて温め過ぎない料理から。
 季節を感じさせない湯葉に、季節の終わりを告げる菜の花、雲丹の旨味と餡の甘みが綺麗に繋いでいます。

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 【椀物】九十九里産はまぐり、芽ねぎ、柚子。
 熱すぎないお椀は、説明がなくても感じられる蛤の味わい。
 彩りの芽ねぎは蛤の美味しさを後押しします。

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 二品目が暖かい汁物は、懐石料理のならいなのでしょうか。
 時代にそぐわないしきたりは変えればいいし、理にかなった作法は繋いでいけば良い。

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 「お酒をお願いします」「それではこちらからお選びください」と、お猪口。
 日本酒は冷やでの提供らしく、お猪口はお盆ごと冷たく冷やされています。
 これと決めてもどれにしようか迷っている体で相手に先に選ばせるのが、殿方の気遣いと心得ています。

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 愛媛の蔵元である石鎚酒造が醸す「石鎚(いしづち)」純米酒 無濾過 R3BY。
 黒河さんの出身地である愛媛のお酒、愛媛の観光話に花が咲きます。

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 【お造り】塩釜産本鮪の中トロ、淡路島産天然真鯛
 新鮮さより旨さ、料理人がお客さんに伝えたい味になるまで三日ほど熟成させてあるとのこと。

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 山葵を切身に乗せ、軽く醤油を付けていただく。
 魚の香りが山葵の香りで磨かれ、魚の熟成感と醤油の熟成感が折り重なり。
 この味わいはたまたまなのか、ずっとなのか、さらに先があるのか。

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 【揚げ物】甘鯛の松笠揚げ、たらの芽天ぷら、里芋のフライ
 魚、山菜、根野菜の天ぷら。
 薬味に塩とレモンが添えられています。

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 甘鯛とたらの芽は塩で、里芋はレモンで頂いてみます。
 里芋はお出汁の下味が付けられていて、パッと広がる美味しさ。

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 「日本酒に合いますので」と勧めてくださった、鮟肝
 鮟肝は既にシーズン終盤、今年最後の鮟肝に合わせる日本酒を勧めていただきます。

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 高知の蔵元である亀泉酒造が醸す「亀泉(かめいずみ)」純米吟醸酒 生酒 R4BY。
 四国シリーズ第二弾、お猪口は変えずにそのまま頂きます。
 やや軽めの口当たりが、こちらの料理に程よく合い、とても楽しめます。

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 【逸品(魚)】長崎県小長井町(こながいちょう)産生牡蠣、ポン酢ジュレと花穂(かすい)
 ちなみに、穂のような形で咲く花のことを花穂(かすい)と呼ぶけど、紫蘇の場合は花穂紫蘇(はなほじそ)。
 生牡蠣は、レモンを絞るかポン酢を掛けて頂くのが定番の食べ方。
 ジュレ状のポン酢を乗せた生牡蠣は初めて、まだまだ知らない料理方があるんだろうな。

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 つるりと一口でいただく、口の中でジュレが溶ける口内調理をも堪能する。
 冷たい食材同士、同じ温度から温まっていく。

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 【蒸物】浜名湖産生海苔の茶碗蒸し
 蓋を開けるとふわっと青海苔の香りに包まれ、鯛の身や椎茸などと楽しみます。
 ちょこんと山葵が、店主さんの美学。

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 お酒を飲み終わった頃を見計らって、今度は酒粕のクリームチーズ漬けを勧めてくださいます。
 酒粕はかつて破棄していましたが、今では様々料理に使われたり、焼いて煎餅に加工して販売されたり。
 チーズとの相性は同じ発酵食品(?)同士、よく合います。

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 長野の蔵元である宮坂醸造が醸す「真澄(ますみ)」純米吟醸酒 生原酒 うすにごり 活性にごり酒 R4BY。
 活性にごりですから、真澄にしては珍しいスクリューキャップ。
 食前ではなくここでにごり、いやいや、次の料理の前に一旦舌を洗い流すんだよ。

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 【逸品(肉)】鹿児島産黒毛和牛フィレステーキ、新じゃがの唐揚げとクレソン添え
 加齢とともに脂身はキツくなり、フィレの赤身が最上の部位と感じています。

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 こちらのフィレはミディアムレアの火加減で、一口に足りないくらいのカットがジャストフィット。
 若い頃なら全く足りなかった味わいが、今ではこれ以上はない味わい。
 添えられた新じゃがいが好相性、さらに素晴らしい。

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 【ご飯】土鍋炊きご飯
 店内のバックカウンター近くのガスコンロ、土鍋で炊き上げ下さいます。
 炊き上がったらしばらく蒸してから、まさに銀シャリ。
 今夜のお米は、魚沼産コシヒカリ「雪しずく」。

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 「お待たせしました」と、まるで焼き魚定食。
 主菜は桜鱒の西京焼き、付け合わせにちりめん山椒、鯛味噌、香の物、そして赤出汁。
 炊き立てのご飯って、どうしてこんなに美味しいんだろう。
 とてもとてもご飯一杯では済まず、お代わりしてしまいます。

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 【甘味】福岡産あまおう。
 デザートはシンプルにイチゴ、甘さだけではない酸味もしっかり感じられる美味しさ。

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 お茶を飲みながらお会計と名刺交換、って名刺はもらっただけだけど。
 美味しい料理、美味しい日本酒をご馳走様でした。
posted by ふらわ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記