
高所恐怖症であっても、窓から外を見なければ大丈夫になってきた。
歳を取って、様々なことに鈍感になってきたってことだ。
昨日は落語と鮨、今日は社内食堂と天ぷら。

お誘いいただき、今夜は天冨良 麻布よこ田 恵比寿ガーデンプレイス店へ。
ビルの38、39階がレストランになっていて、席が予約で埋まっていなければ飛び込みでも入店できます。
来店を告げると、まずはコートを預かってくださいます。
高級店とそうでない店の違いは、非日常の演出から。

店内は中央と思われる場所に揚げ場、揚げ場の前にカウンター9席。
個室が壁側に並んでいて、綺麗な夜景を眺めながら美味しい天麩羅を楽しめます。
私は夜景より料理、カウンターで板前さんとのお喋りが何よりの御馳走。

予約して頂いたコースは、天冨良【極】会席16,000円(税込)、に飲物代。
席に着くと、今夜揚げる食材を説明してくださいます。
季節の野菜と旬の魚貝、そのまま食べても美味しそう。

続けて、調味料を説明して下さいます。
天ぷらは様々な調味料で楽しめますが、こちらに天つゆは用意されていません。
塩とレモン、そしてよこ田独特のカレー塩。
レモンを塩に絞ってレモン塩とし、初めはレモン塩で、残りをカレーでお楽しみくださいと。

今夜は恵比寿で二人お疲れ様会。
サッポロ SORACHI1984、ビールのことは詳しくないけど、ソラチエースの爽やかさは忘れない。

座付きに、鰻スープ。
天ぷらをより楽しめるように、天ぷらの前に身体を温めるところから。
とは言え、もうビールを飲んじゃってますけど、ね。
抹茶のような濃い味わいではなく、あくまでも食前、鰻の美味しさを感じつつ、後を引かない味わい。

天ぷらは揚がるとカウンター台の懐紙に置かれます。
懐紙の上から手前のお皿に降ろして頂くのが、正しい作法かと邪推しますが。
揚場から世界で一番近い席だから、揚げたてをそのまま頂きました。

長崎県産車海老、海老足から。
揚りを目で楽しみ、香りを鼻で楽しみ、食感を口で楽しむ。

続いて、海老の身。
いつの頃からか海老は尾まで揚げて、太鼓橋の様に反らせる様に。
頭をいただいた食感が消えない内に身を味わう、ほのかな甘みが言葉を失わせるほど美味しい。

タラの芽
旬の野菜、いや、山菜か。
この苦味こそが春を告げる味わい、レモン塩も合うし、カレーも合います。

サワラ
厚めの切り身を、全体が均一に蒸される様に丁寧に揚げる。
刺身でも美味しい切り身は揚げても美味しい。

マイタケ
先から奥まで違和感なく蒸されていて、茸の旨みが引き立ちとても美味しい。

富山の蔵元である三笑楽酒造が醸す「三笑楽(さんしょうらく)」純米酒 赤ラベル。
青竹を模した片口とお猪口、美味しいお酒がさらに美味しい。

酒肴として、海老と芋の味噌餡掛け、イクラを乗せた鮑の肝とザーサイの中華和え、姫サザエ旨煮、ウルイのお浸し。
どんなに美味しい料理も、変化なく続くと味に慣れてしまうのも道理。
仕込み料理を挟んで、会席ならでは箸休め。
箸休めであっても一才の手抜き無し。

タケノコ
ここまで柔らかい天ぷらが続いたので、筍の心地よい歯応えがとても印象的。
味付けして食感を楽しむことの多い筍ですが、天ぷらですと筍本来の味わいを楽しめます。

帆立生雲丹添え
揚げた帆立に生雲丹を乗せて、帆立の温かみと雲丹の冷ややかさを一緒に味わえる天ぷら。
帆立は半切りされているので2回に分けて楽しめる様ですが、私は一度で食べてしまう。

ふきのとう
野菜と言うより山菜の蕗の薹、ほろよい苦味がとても美味しい。
なんともなれば、一口サイズの蕗の薹を揃えるのは、高級天ぷら屋ならではなのかな。

お造り
今夜の魚はブリとクエ、醤油はゼラチン状で提供されます。
ゼラチン状の醤油では山葵と馴染みにくいかと思いきや、切り身に乗せて頂くと、ちゃんと山葵醤油。

栃木の蔵元である惣誉酒造が醸す「惣誉(そうほまれ)」特別純米酒 生酛。
こちらの片口とお猪口は江戸切子調、生酛造りのお酒のイメージによく合います。

太刀魚
魚は厚切り、皮側と内側で天ぷら粉の厚みを変えて通る火加減を調整されています。
「太刀魚の鱗はラメに使われることもあるんですよ」なんて次から使える豆知識。
カウンターならではの、楽しみですね。

熊本県産赤茄子
茄子は水気を閉じ込め、わずかに水っぽさを感じる様に揚げてあります。
じゅっと蒸気が立ち上がる様な食感は茄子ならでは、カレー塩を合わせてとても美味しい。

車海老とズワイガニの天巻
平皿に大きめの焼海苔を敷き、車海老とズワイガニの天ぷらを乗せ、さらにキャビアをあしらってあります。
少しきつめに巻き上げて、太巻きのように頂くと至上の幸福。
美味し過ぎて、会話も途切れがち。

銀宝
天ぷらと言えば江戸前、江戸前天ぷらと言えば銀宝(ぎんぽ)、天ぷらのためにある魚。
クセのない白身がふんわりと蒸しあがっていて、いつもなら天つゆにどっぷり浸けるところ。
今夜はカレー塩で美味しくいただく。

アワビ
生の刺身や鉄板焼きなどで楽しんできた鮑、今夜は天ぷらとして頂けるなんて。
貝の天ぷら自体がとても珍しく、貝好きな私には堪らない天ぷら。

和歌山の蔵元である名手酒造店が醸す「黒牛(くろうし) 」純米酒。
やや遅きに逸した感もありつつ、ご飯物までまだあるだろうと日本酒を重ねます。

穴子
江戸前寿司にも似て、最後のネタは穴子。
腹の部分と尾の部分を「どちらにしますか」と問われ、友人に美味しい方を譲ろうと、腹の部分を頂く。
ふわふわな食感がたまりません。

食事
芝海老天茶漬けか芝海老のかき揚げ丼を選べるので、天茶漬けをお願いしました。
どちらも漬物三種盛り、先ずは蓋を取ってお茶を掛けるところから。

それなりにお腹が膨れたけど、天茶漬けは別腹。
お茶漬け用に揚げ方を調整されているのだろうか、とろけるように美味しいんですけど。
美味しい天ぷら、美味しい日本酒をご馳走様でした。

冬のアナゴもうまいですけど、年が明けちゃうと産卵期が過ぎて身がやせてませんか。
ギンポもアナゴも食べ比べできるほど食べていないので、良く分かりません。