
雨の吉祥寺。
毎月のように通っていたのはいつの話しか。
まだまだ昔を振り返るには若すぎる。

お誘いいただき、鮨といろへ。
吉祥寺に美味しいお寿司屋さんがオープンしたから、一緒に行こうよと誘われたのは先月。
雨の吉祥寺、駅から井の頭公園近くまで歩いて、緩やかな坂を下って、ちらっと右に入って、階段を下って。

完全予約制ですので、ふらりと入っても飲食できず、必ずわざわざ伺うお店になります。
階段と入り口は狭く、店内は天井が高く。

広い店内、寿司を握る大将の周りを取り囲むようにぎゅっと詰められたカウンター席。
座った時に窮屈さを感じるのは、美味しいお鮨とシャレが効いた大将の話しで、身も心も解れる前振りでした。
中居さんが「お待ちしておりました、お召し物をお預かりします」を声を掛けて下さいます。

予約してくれたのは、「全21品特上おまかせコース 大将こだわりの鮨と四季折々の逸品」13,200円(税込)、飲み物代別。
「いらっしゃいませ、お飲み物はいかがなされますか」と水を向けられ、ソラチをお願いします。
今日は病み上がりなので、ビールと日本酒を一杯づつにしとくか(できれば)。

先ずはサッポロ ソラチ 1984で乾杯、ってグラスはぶつけずに合わせるだけ。
今夜は吉祥寺で二人お疲れ様会、雨の日でもビールは美味い。

ビールで糊口を濡らし切らないウチに、食べ比べの手巻き雲丹を渡されます。
先にムラサキウニ、調味料は一掴みの塩。

続けてバフンウニ
食べ比べなんだから、あっちが甘いとか、こっちが柔らかいとかあるけど。
ウニ自体の個体差があるだろうし、どちらも美味しいことしか分からない私。

小鉢に誂えた石鯛の刺身、紫蘇果報があしらわれていて可愛い。
煎り酒を合わせてあり、新しさの中に古き良き時代が漂っています。

茶碗蒸しはズワイガニとイクラ
この時期、ズワイガニもタラバガニも美味しく、食べ比べたら違いが分かるのかもしれません。
私はイクラと相性が良い茶碗蒸しを美味しくいただければ満足です。

ホタルイカのなめろう、ゲソの利休和え
あんなに小さい蛍烏賊をなめろうに仕立てるなんて。
こんなに小さいゲソを利休和えに仕立てるなんて。

「何を飲まれますか」「ざくをお願いします」
三重の蔵元である清水清三郎商店が醸す「作 恵乃智(ざく めぐみのとも)」純米吟醸 R6BY。
これまでは「オススメはありますか」と始めていた私ですが、今は昔。
美味しくて大好きな日本酒から飲む私。

早くも握り、先ずはガリが用意されます。
ガリってお寿司やさん毎に違い、見たときの新鮮さを大切にしたいので、事前に調べないようにして。
甘酸っぱく仕上げてあって、二回も三回もお代わり。

握りはヅケダイに置かれるんですね。
かつてはゲタと呼ばれた気がするけど、花板が手元で盛り付ける場合はゲタを使うことが多いのかな。
ゲタの上に笹を敷き、お寿司を乗せてくれたお寿司屋さんもあったような気もします。
常識とか、一般的とか、難しいですね。

一握り目はスミイカ
スミイカには醤油ではなく炭塩を合わせて下さいます。
シャリには色合いの淡い赤酢を合わせてあります。
イカ独特の食感と炭塩の軽やかさ、ほんのり酸っぱくしっかり美味しいシャリ。

次は炙りシメサバ
軽く炙って身を締めた印象の食感、厚い身へ大きく包丁を入れシャリを包む。
ひとくちで食べてしまうには惜しいけれども、美味しいから一口でいただきます。

小肌
先のサバとは逆に皮の部分へ包丁を入れ、刷毛でサッとつめを塗られて。
両端がはみ出るほどの小肌、食べていないかのように溶けてしまいます。

赤身。
こちらではコースの真ん中辺りでマグロが出されるのですね。
碁盤の目の様に綺麗に包丁が入り、マグロの脂でつめが流れ落ちない様に、なのかな。

中トロ
赤身と同じ魚体と説明があり、マグロは柵ではなくブロックで仕入れているとのこと。
ネタ(刺身)は新鮮さも大切ですが、熟成も大切。
とろけるように美味しいトロ、ウンマイ。

「次は何を飲まれますか」「それではにちにちをお願いします」
京都の蔵元である日々醸造が醸す「日日 山田錦(にちにち やまだにしき)」純米酒 第四酒造期 旧米田村産山田錦 R6BY。
全量生もと純米造り、全量原酒の日日、今回は旧米田村産山田錦で醸してきました。
原酒でアルコール度数11%ってどゆこと?しかもガスを感じるし。

タラの天ぷら
揚げ物や蒸し物などは、背中側から声を掛けられます。
タラの芽の天ぷらは何度も頂いたことがありますが、タラの天ぷらは初めてかもしれない。
しっかりとした旨味と甘味のタラ、美味しいですなぁ。

フグの一口蒸し
椀物ではなく蒸物、この日の一品料理で群を抜いて美味しいフグの蒸し物。

今年はフグ刺しを食べられなかったけど、このフグで十分満足。
ふぐ以外にもあれこれと使われているんだろうな。

ホタテの磯辺焼き
再び手渡し、先のウニでは遅れをとったが、今度はきちんと。
磯辺焼きと言ってるけど、焼いているわけではなく、帆立の刺身を焼海苔で巻いた一品。
でも「磯辺焼き」と言われると、醤油の香りが立って感じるから不思議ですね。

箸休めにはベッタラ漬け、ゴボウの醤油漬け。
大将を囲むカウンター席が満席に近くなり、握りだけでなくお喋りにも忙しく。
次のお酒を飲みながら一息つきましょ。

春子鯛(カスゴダイ)
まだ春には早いけど、早く春にならないかなぁと、カスゴダイ。
桜の花びらソースを合わせてあり、こちらでしか楽しめない美味しさ。

甘エビの三本握り
寿司で海老とくれば圧倒的に車海老のところ、こちらは甘海老。
いつもは二本を今夜は特別に三本、握って下さいます。
エビパウダーを掛け、海苔など使わずに綺麗に握りますよね。

アイナメの昆布〆
握りのアイナメは随分と久し振り、溢れるほどのつめがよく効いてとっても心好い。

煮穴子
ふんわりと仕上げられた煮穴子が出てくれば、コースはラストスパート。
たれは使わず、煮穴子とシャリだけで楽しみます。

玉
お寿司屋さんによっては呼び名も仕上げも変わる玉子焼き。
レアチーズケーキの様な食感と、玉子焼きの美味しさと。

お椀
アラの出汁を程よく効かせたお椀、冷えた身体が温まりますねえ。

最後にお茶をいただきます。
十人十色を由来とする鮨といろ、素晴らしい二時間をありがとうございます。
美味しいお寿司、美味しいお料理、美味しいお酒をご馳走様でした。

帰りは下北沢乗換で。
一人で帰ると1時間は長いけど、二人で帰ると1時間は短い。
これくらいは飲み食いできます。
胃腸炎は医者の見立てですので、私に聞かれても。
そんなものですかね。